谷口文朗のウエノハラ研究報告

2016-11-1 『理想のふるさと創成とその手法』に関する谷口ウエノハラ研究室最終報告

Ⅰ はじめに  25年前に東レ・東レ経営研究所から帝京科学大学に着任後、私は、当地の地域づくりの研究を続けて来ました。その研究結果を『理想のふるさと創成とその手法』として取り纏め、来年の市長選挙に立候補を予定されている方々の後援会会長にお届けしました。新参ものの私に今日まで頂いたご厚意に感謝の意を込めてその要点を報告します。その理由は次の3点です。

 

1 市が市内全域に光ファイバーを敷設して以来この8年間に情報通信技術が進歩した結果、スマートフォンを使ってインターネットを利用出来るようになり、市の光ファイバーを活用して『コンパクトな理想のふるさと』を創成する新次元の未来がこの地に開かれました。

市の光ファイバーを流れる有線情報を無線の情報に切り替えて発信することによって、誰もが、何時でも、何処でも、光ファイバーに繋がったパソコンの前に座っていなくても、携帯電話の手軽さでインターネットを使えるようになり、こと情報に関する限り、上野原市は首都圏の僻地ではなくなり、西原や秋山の無生野は上野原市の僻地ではなくなりました。

独り住まいのお年寄りが『ちょっと病院まで便乗お願い』とインターネットのSNSで発信されると、ご近所の若いお母さんから『ついでがあります。はい!了解!』という返事が返ってきて、子育て最中のお母さんが『ちょっとベビーシッターをお願い』と発信されるとご近所のお年寄りから『はい!了解!』という返事が返って来る、そして、お互いが感謝の気持を地域通貨(ケヤキシールやスーパーのポイント券)で交換するという『みんなじゅうが助け合うコンパクトな共助社会』をこの地に創成するチャンスが生まれました。

このような共助社会が生まれると、こと交通に関しても、当地の僻地は僻地でなくなり、家族やご近所の絆が織りなすセーフティーネットの中で安心安全な生活が出来るのです。

これだけ恵まれた自然環境の中に居ながら、首都圏の最高の医療・学術文化・教育・就職・ショッピングなどの恩恵を受けられる『理想のふるさと』がこの地に姿を現すのです。

 

2 今、私たちに求められることは、『為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり』という和歌に学んで、みんなじゅう が力を合わせて、市の行政財産である光ファイバーを活用して、『この地に理想のふるさを創り出すこと』ではないでしょうか。

 

3 そのために、今、私たちが必要とするのは『選挙のための絵に描いた餅(公約)』や『嘘をつきませんという口先だけの約束』ではありません。『公約を実現する確かな手法』です。

 

 

Ⅱ 公約を実現する確かな手法  『公約を実現する確かな手法』の研究結果は、①『副市長を事前に明らかにした上で立候補する上野原式市長選挙の仕組み』、②『市の9つの地区区長会に重要案件を説明する上野原式情報公開の仕組み』、③『東京都の新公会計制度の導入と科学の立場に立った上野原式スピード行政の実現』の3点です。その内容はこれまでの当地の市長選挙と選挙後の行政の常識と慣行とは異なりますが、みなさま方に有権者の立場でご検討頂き、来年の市長選挙の投票の参考にして頂きたく、お届けしする次第です。研究結果の具体的内容は次の通りです。

 

1.『副市長を事前に明らかにした上で立候補する上野原式市長選挙の仕組み』

選挙には直接選挙と間接選挙があります。アメリカの大統領は直接選挙で、日本の首相は間接選挙で選ばれます。市長はアメリカの大統領選挙と同じ『直接選挙』で選ばれます。

日本では、直接選挙で選ばれる市長候補はアメリカの大統領選挙のような予備選挙による競争の洗礼を受けませんので、当選後の恣意的行政と権力の乱用に対する歯止めが必要です。『当選後の市政の運営で決定的不一致が生じた場合、閣内不一致による内閣総辞職に倣って市長辞任』の書面を公開した上、副市長の名前を示して立候補する仕組みによって権力の乱用と腐敗に歯止めをかけようという考え方です。現在、副市長は選挙後に議会に提案され選任されていますが、当選した市長が事前に明らかにした副市長の選任について議会の賛同を得ることは可能でしょう。

総務省はアメリカの直接選挙に倣ったこの方式は不可能とは言いませんでした。この上野原方式にみなさま方が積極的に賛意を表明されれば今回の選挙から実現可能と私は考えています。

 

2.『市の9つの地区区長会に重要案件を説明する上野原式情報公開の仕組み』

市政の課題である重要政策決定プロセスの透明性確保についての研究結果は次の2点です。

第1点:サイフォンの原理を活用して棡原から中心市街地に水を引いた先人のふるさと創成への熱い思いと叡智に学び、『駅南口開発その他重要事業の実行案を(数百万円を投じて)コンサルに丸投げするのではなく、今もこの地に継承されている叡知と情熱を結集して成案すること』です。

第2点:この案を『議会審議に先立って9つの地区区長会で詳細説明し、情報を公開すること』です(審議と採否の議決は議会の専管事項ですから地区区長会では説明するだけに留めます)。

 

3.『東京都の新公会計制度の導入と科学の立場に立った上野原式スピード行政の実現』

上野原市は『家計と同じ現金主義・単式簿記』で決算を行なっています。これを改め『民間企業と同じ発生主義・複式簿記の会計制度』を導入し、(光ファイバーの)減価償却を行い、税収を売上高に見立てて市の損益計算書と貸借対照表を作成して、『時は税なり』を合言葉にしてスピード行政を行うことです(日本では東京都だけが税収を売上高に見立てて損益を計算し、財務諸表を作成しています)。

『科学の立場に立った行政の仕組み』については、『行政をシステムとして捉え、経営工学の手法を応用した因果関係に忠実な行政の推進』ですが、まずは、変えたくても変えられない河岸段丘という当地の地形に鑑み『特区を申請してでも地球の引力に逆らわない合理的行政』を推進することです(『毎朝、北口でバスを降りてプラットホームへ急ぐ通勤客をわざわざ南口まで運び下ろして、86段の階段をエレベーターで運び上げるというのは不合理です。北口をバスの降車と自家用車の送迎に利用するのが合理的です)。

 

 

Ⅲ 個別・具体的政策案の例示(6件はすべて私の研究結果です。みなさま方のお考えを追加して下さい。) 

 

1.光ファイバーを流れている有線情報の無線情報への切り替えとインターネット活用:有線の情報を無線に変えて発信する装置は、個人をベースとした小規模な装置から事業用の大規模な装置までありますが、これによって『自家用車便乗やベビーシッターなどの助け合いのネットワークの構築』と『地域通貨によって可視化された感謝の気持の交換』が可能になります。

 

2.地域通貨で記帳される上野原善意銀行のインターネット預金通帳:上野原市の社会福祉協議会にすでに開設されている善意銀行にケヤキシールやポイント券を授受する『インターネット上の預金通帳』を作り、『感謝の気持』を目に見える形で授受します。これによって年金や現金給付では救いきれない社会福祉制度の盲点をカバーした『充実したコンパクトな共助社会』が生まれます。

 

3.膨大な学びのための『中央公民館』の建設:インターネットをフル活用した『みんなじゅうが助け合う上野原式共助社会』を生きるには『膨大な学び』が必要です。そのために『学びの司令塔としての 中央公民館』が必須です(『公民館は市役所にある』と説明されたことがありますが、看板はありません)。その場所はお年寄りや子育て途上のお母さん方にやさしい街中の織協所在地が最適です。

 

4.『諏訪⇔新田道路拡幅』による中央環状道路と放射道路体系の整備:消防署が街中から八ツ沢へ移設されたにもかかわらず『諏訪⇔新田道路の拡幅』は未実現です。拡幅が必須です。

 

5.『市立病院は警備的医療機関』:手術などを行う戦闘的医療機関は甲府や東京の大病院に委ね、市立病院は警備的医療機関として『人間ドックの受診資格を市に国保税を納めている市民に限定しないで、会社の健保組合に加入している市民や近隣の市町村の国保加入者に拡大』します。

 

6.『水越八重教育基金による育成会活動助成』:育成会活動の目的を『上野原の自然の中で、科学的思考を身につけ、逞しく生きる力と新しいものごとを創造する魂を身につける』ことと定義し、水越八重教育基金によって、上野原各地区の育成会活動を助成し、逞しい子供を育みます。

 

 

Ⅳ おわりに ― はじめての方へのご挨拶 ― :ここに述べた考え方は、5年前に新三区区長を拝命し、上野原財産区管理委員と青少年育成推進員を各4年務めて『地上ゼロメートルの目線』でこの地の 政 と 牛倉神社の 祭ごと に携わって来た『私の理論と実践の結論』で、私の上野原の卒業研究です。当地の電子新聞『上野原市民ポータル』にリンクしたHPで詳細説明に着手します。

最後に、政治信条を記します。私は、『ビジネスを敵視する考え方を峻拒、ビジネスが生み出す利益が生活の根源で、分配の前に成長が必要』と考え、都知事選挙では『保守・改革派の小池候補』がよいと思いました。 

         平成28年10月1日   谷口ウエノハラ研究室

ウエノハラの地域研究

1.ウエノハラの過去・現在・未来:ウエノハラは、その昔、甲斐絹(かいき)と呼ばれる絹織物で人々の生業(なりわい)を支えて来ました。戦後、繊維産業がわが国で成り立たなくなった時、ウエノハラは、①繊維産業のもつ繊細な加工技術、②繊維産業の持つしなやかさを発揮して金型製作とプラスッチック成型加工を中心に電子部品産業へ転換し、生業を保ちました。

 

現在、ウエノハラは①リバーテラス(河岸段丘)の恵まれた自然環境、②首都圏に隣接する地理的好条件、③高速道路網による物流、④市が敷設した光ファイバーによって山間の集落の隅々までインターネット環境が整っているにも拘らず、人口は24000人まで減っています。

 

人口はウエノハラの活力の指標です。人口減少は日本全体の課題ですが、政(まつりごと)の重みをしっかりと受け止めて、私たちが納める税金を活用して人口を増加に転じさせる『抱負・経綸』と『志・気力』だけでなく『確かな科学的手法』に基づく行政運営が求められています。

 

 

2.縁あって区長を拝命して『行政の内側から市政を問診して来た結論』:ウエノハラに新設された帝京科学大学に誘(いざな)われて住民税を払いはじめて22年、固定資産税を納めはじめて12年、とくにこの1年半、新三区の区長・上野原地区区長会会長の立場から行政を内側から観察・自問自答して来た結論は、『私たちが納めている税金は民主党的なばらまきには使われたが、整備された情報基盤を活用して時間と経費が合理化されて生業の収益が増加し、街全体が根本から元気になるような施策にはほとんど使われていない』ということです。このままでは人口減少のジリ貧傾向から抜けられないというのが私の研究結果です。(注:22年前に私がこの地に新設された大学に着任した時『上野原』は街中を意味するがゆえに『市全体を言いたい時には 上野原 と書いてはいけない』と教わりました。)

 

3.私の診断:政 の停滞の原因は『2派に分かれた 政 の綱引き構造』:私の診断は『2派に分かれた綱引きを今のまま続けていたのでは、みんなじゅうが一所懸命 政 に参加してもウエノハラの 政 は前へ進まない』ということです。そして『私の診断根拠』は『論理的(科学的)思考に欠けているが故に 感情論 が、論理的(科学的)手法に欠けているが故に 利権(強いもの勝ち)がこの地の政を動かしている』ことです。

 

4.私の処方:『政 の綱引き構造』脱却の突破口は『システムという科学的思考法』:科学は『自然が創造したものごとを分離し、その成り立ちを解明する方向』で進歩してきました。しかし、科学の成果を活かして、自動車や通信衛星など自然に産しないものごとを人間が創造し、生活に利用する段階になって『システム という考え方が必要』とされるようになりました。このシステムという考え方は、機械システム・ソーラーシステム(太陽系)・ナーバスシステム(神経系)などの表現で自然科学の各分野に深く浸透していますが、社会システムという形で経営や行政など社会科学分野にも広く応用されています。システムの理論は『システムには必ず目的があり、全体の目的達成のために多くの部分がそれぞれに決められた役割を粛々と果たす』という考え方であり、システムを動かそうとする時に、『工程表によって時間』を、『分担表によって人』を、『予算によって資金』を管理・統括し、『最小の費用と最短の時間で所定の成果を上げる手法』です(生業を営まれる方にとっては当たり前のことです。この手法で行政を動かすには理論武装が必要です)。

 

5.期待される効果:『右往左往行政の解消』と『公平でスピード感のある行政』:システム思考から生まれる行政の姿は、市長から担当者まで全員が『案件の目的』を確実に共有し、『それぞれの役割に従って、所定の予算で、所定の時間内に案件を完遂するという行政運営』であり、『感情論や利権集団からの横槍による右往左往行政の解消』であり、『スピード感のある公平な行政の実現』です。